SS1*23話直後、テレビを見るのを邪魔された美哉の詳細
「ほら、ちゃんとテレビ見ろって。美哉が毎週見てるドラマだろ……?」
「〜〜〜!」
見ろって言うなら、下ろしてくれないかな……!と言ったら眩しい程の笑顔で即座に却下されたので、もう諦めている。……別に、嫌な訳じゃない、し。
――現在、夕飯を食べ終わり寛人に片づけをしてもらって、何故か。本当に何故か、寛人の膝に抱きあげられている。
片付けが終わった寛人にお礼を言うついでにお茶を淹れたんだけど。戻って来たら、ソファに座る寛人が自分の膝を叩いた。訳が分からなくて首を傾げる私に、無言で近寄って来た彼は、何故か私を抱えて膝の上に乗せて。目を丸くする私が逃げられないように腰に腕を回し、テレビを付けた。
『えっ、ちょ、ちょっ!?』
『何だ?』
何だじゃないでしょ何だじゃ……!
至近距離にある熱に、目が回る。気持ちを自覚した途端の急接近に、心臓が飛び出そう。ばくばく大きくなる心臓の音が苦しくて、呼吸すら、危うくて。
真っ赤になってひたすら俯く私の頬に、音を立てて口付けを落とし、微笑む寛人。その笑みはとても艶めいていて、目が、奪われる。
……そうして抵抗する隙が奪われ、今に至るのだけど。
(……えーい慣れた者勝ちだ!)
しばらくあたふたしていたけれど、開き直ってテレビを見ることにする。確かに毎週追っかけてきたドラマだし、見逃したくはない。そう思って、全身を包む寛人の香りや温もりを、どうにか意識から引き剥がした。
私が毎週見ているドラマは、喧嘩友達だった会社の同僚がふとしたきっかけで距離が縮まり、色々な難関を乗り越えて恋に落ちるというベタな恋愛ドラマ。普段あまりテレビを見ない私がドラマを見るなんて相当珍しいのだけれど、たまたま一話を見た時に、ヒロインに片思いしている上司役の俳優の切ない顔に惹かれてしまった。
……それにその俳優さんの顔立ちが、どことなく寛人に似ているから。
なんてことを考えて、また一人恥ずかしくなった。
ドラマを見始めて三十分を過ぎた頃、ヒーローとヒロインが大喧嘩をして、ヒロインは雨の中外に飛び出してしまう。そこで上司と偶然出会い、傘に入れてもらうのだが。
『どうして、お前はあいつがいいんだ』
『え……?』
ヒロインの話を聞きながら、切なく表情を歪め、ずぶ濡れのヒロインを抱き締める。そして、極めつけに。
『俺は、お前だけをこんなにも愛しているのに――』
低く囁かれたその台詞に、私は内心悲鳴をあげていた。
こんなに大人で理解もあって優しくて格好いい人を、本当にどうしてヒロインは好きにならなかったのだろう。私だったら、絶対に最初から上司の方を好きになっちゃうだろうな。なんて思いながら、ヒロインの反応を真剣に待っていると。
「っひゃ!?」
いきなり、耳に衝撃が走った。別に痛かった訳ではないけれど、何か固いモノに挟まれて。次の瞬間、その場所を熱くぬめったものが通り過ぎる。
なに。なに!?
パニックになっていると、今度は脇腹を擽られる。くすぐったくて身を捩ると、私を見下ろす寛人と目があった。
それは何処か、不機嫌そうで。
「ひ、寛人、何っ?」
「別に」
尋ねるものの、明確な答えは返って来ない。けれどその手は相変わらず私の脇腹や腰を擽り、唇はこめかみから頬を滑り、耳に触れる。その感触に、さっきのアレは耳を甘噛みされ、舐められたのだと理解して熱が上がった。
「ふ、やっ、寛人っ」
「……美哉」
熱い掌と唇に翻弄される私に、寛人は少しだけ笑みを零す。そしてその熱はとうとうまた、私の唇に降って来て。
――もちろん、ドラマが見れなかったのは言うまでも無い。
***
簡単に言えば、美哉が他のものに集中してるなんてつまんねーんだよーby寛人ってお話(笑)
随分前に書いたものです。
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